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入居者が孤独死した場合の貸主側の対応とは?

浅里 謙介

「孤独死」は年々増えています!

 昨今、単身世帯の増加にともない孤独死の件数も年々増えています。また、「孤独死」と聞くと思い浮かべるのは高齢者ばかりと思われがちですが、実際は60歳以下の方の孤独死も増えています。

 下記の男女別死亡年齢の構成比を確認すると、20代~50代の方は全体の40%程度となっておりますので、一概に若い人だから安心だろうというのは既に信用できなくなっている状況といえます。

「孤独死」には前兆がある場合があります

 筆者にも経験があるのですが、孤独死には前兆がある場合があります。一番多いものとしては郵便受けにチラシがたくさん残っている状態です。このケースですと体調が悪くお部屋から出られなくなっている可能性があります。実際に投函物を確認すると亡くなる1カ月前ほど前からの郵便物が溜まっていたことがあります。大家さんとしては、物件の清掃などに行った際に何か普段と違う点はないかを確認することが大切です。

始めに誰から連絡が来るのか?

 管理会社に「入居者と連絡がとれないから心配だ」とご連絡頂ける方の多くはお勤めされている企業かご親族の方です。大家さんとしては知らない番号だからといって電話にでないというのは控えた方がいいかもしれません。また、現場確認(安否確認)ですが、後々のトラブルを防ぐためにも大家さんだけで室内に入ることはせず、必ずご家族の方や警察に立ち会ってもらうようにしましょう。また大家さんが相続人の許可なく残置物について処分することはできないため、相続人に残置物の引き取りや処分についても依頼しましょう。

孤独死が発生した場合、その後の賃貸借契約はどうなるのか

 賃借人(入居者)が孤独死した場合でもその時点で契約が終了するわけではありません。相続人が賃借人の地位を継承することになります。ただし、ほとんどのケースで相続人は亡くなった方が住まわれていたアパートを借り続ける選択をしないため一般的には賃貸人と相続人とで協議をして賃貸借契約を解約するということになります。なお、相続人が複数いる場合は相続人全員に対して協議をすることが必要です。また、解約日については、契約書条項に「賃借人からの解約の申し入れは〇〇日前までに通知する」など記載があるかと思われますので確認しておきましょう。

原状回復費用やその費用の請求は?

 孤独死が発生した場合、日数が経過すればするほど異臭や害虫、建物内の劣化などが酷くなります。相続人や身元確認などに時間がかかるケースもありますがその間放置しておくと苦情や資産価値の低下につながるリスクもあります。

 そのため、原状回復については早急に行うことに越したことはありません。一般的には残置物の処理に加え、特殊清掃を実施する必要があるでしょう。当たり前のことですが、原状回復費用の見積はしっかりとしておきましょう。

 また、並行して原状回復費用を相続人や連帯保証人に請求する準備も進めておきましょう。請求の際は、見積書等を提示し納得してもらう必要があります。

 また、現在は保証会社等が残置物撤去費用を負担するケースもありますので念のため確認しておきましょう。

「孤独死」は告知義務があるのか

 自殺した部屋や事件があった部屋などに望んで住みたいという方はいないのが一般的です。そのようなことが発生した際には次の賃借人に対して「〇〇があった物件」と告知しなければなりません。これを告知義務といいます。ちなみに告知義務を怠るとあとから賃借人に損害賠償請求を受けたり、契約解除されたりすることもあるので注意しましょう。

 それでは、「孤独死」のケースはどうでしょうか。過去の判例をみると次のような事象の場合は告知義務が必要と考えられます。

(告知義務が必要なケース)自殺、殺人、不審死、変死、焼死など

(告知義務が不要なケース)病死、自然死など

「孤独死」の場合は主に、自殺か病死、自然死に該当すると考えられます。判断がつかない場合は管理会社などに相談することをおすすめします。

さいごに・・・

 「孤独死」が発生した際は、相続人との協議や原状回復費用に加え、法律的観点で判断することが重要となります。「孤独死」は以前と比べ身近な存在になっておりますので、いざという時に相談できる管理会社や弁護士などを見つけておくことが大切です。

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Asari Kensuke
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事業用不動産の専門部署  業務内容:多摩エリア全域 事業用物件の空室対策や、空き家の活用、事業用不動産の売買などを行っております。 ◇宅地建物取引士 ◇賃貸不動産経営管理士 ◇不動産コンサルティングマスター
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